100年前、芸人が漫才中に突然死んだといういわくつきのお笑い劇場の見学ツアーに参加した人達を描いた短編。

 

「タラレバ話をしてしまうとそれが現実になってしまう」

 

という怪奇現象に翻弄され、しまいにはじゃんけんで殺しあった挙句全滅するというシステム的ドタバタコメディ。

 

家のカギはこの作品で2016年の早稲田祭においてオムニバス企画に参加するとともに、実質の旗揚げを果たした。

 

【出演】

 高村颯志 五十嵐恵美 金森悠介

 下川拓人(以上、家のカギ)

 坂本みなみ 末永彩百合 萩原涼太

 矢島聖人(劇団森)

 

主宰・高村コメント

 

企画の立ち上げ当初は

「気楽に遊ぶような公演にしよう」ということで始まりました。

 

そのためプロットも大まかなストーリーラインも全く用意がなく、稽古開始からしばらくは台本のない稽古が続きました。

ただ1つ最初から決まっていたのは

 

「フラグを立てると必ず回収されてしまう」

 

というルールのもとでお芝居を進めよう、という悪ふざけのようなシステムだけ。「フラグ」というのはスラング的な用語ですが、いわゆる伏線のようなものです。

そのシステムを使い物になるように議論を重ねて

「タラレバ話に絞って、発言が現実になってしまう」

という土台ができました。

 

そしてそのルールでひたすらエチュード、会議、エチュード、会議の連続でした。台本が最後まで書きあがったのは本番の3日前、さらにその後、本番で上演した内容の台本になったのは本番の日の朝でした。こんな無茶が通ったのは、ついてきてくれた役者のみんなのおかげです。

 

 

また、"常に新しい試みを含む企画展開を目指す"演劇ユニット「家のカギ」の今回の試みは主に3つです。

 

 

1【システムだけ用意して、そこから組み立てるようにお芝居を作ること

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これは、メッセージ過多になってしまいがちな僕自身の弱点への挑戦でした。また、やたらと小難しく奇をてらう傾向を感じる学生演劇との差別化も意識しました。

 

 

2【演劇以外(特にお笑い)も参加する企画のため、お芝居の導入を漫才にする】

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これは、お客さんに「目の前で起こっていること」という現前性を感じてもらうとともに、突然演劇になるシーンで奇妙な感覚を与えられたら、という目的がありました。

 

 

3【「僕を作演だと思わないでください」】

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これは、稽古終わりの役者に頻繁に投げかけていた言葉です。これのせいで本当に本当に役者には負担とストレスをかけました。

台本のない稽古と会議をひたすら繰り返した、と前述した通り、今回の作品は到底僕ひとりで書き上げたものではありません。常に役者に意見を求め、結果的にそれを僕が文字にしたということでかろうじて「作・演出」と名乗ったわけです。

 

 

と言った具合に

お客さんにはどうでもいいことかもしれなくても、根拠を持って、1つずつ積み上げていくことが大事なのかなと思います。

結果はどうであれ試みは大事だと思っています。

あの悪ふざけみたいなお芝居は、こういった割と真面目な試みを含んでおりました。

 

だからどうというわけでは無いのですが、忘れないように書き留めておこうと思います。